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霧島夜子の愛の風景

Short Novel

夫がいて、彼がいる
——二つの愛の在り処

霧島 夜子

夫を愛している。彼も愛している。矛盾しているようで、私の中では矛盾していない。ただ、愛し方が違うだけだ。——40歳の私が、二人の男性を愛しながら生きることで気づいた、愛の形について。

目次
第一章

彼の指が触れるとき

彼の部屋は、いつも少し暗い。

ブラインドから差し込む夕方の光が、白いシーツの上に細い筋を作っている。私はそれを眺めながら、自分の呼吸がゆっくりと落ち着いていくのを感じていた。

「夜子さん」

低い声で名前を呼ばれると、それだけで身体の奥に熱がともる。三十代の彼には、私より五歳若い。でも不思議と、そういう差を感じたことがない。彼は私を「年上の女性」として扱ったことが一度もなかった。ただ、一人の女として見てくれていた。

彼の手が、私の肩から背中へと滑る。その指の動きはいつも丁寧で、急がない。それが好きだった。焦らない、急かさない。私が準備できたと感じたときだけ、次へ進む。

こんなふうに触れられると、自分が四十歳だということを忘れる。ちゃんとひとりの女として欲しがられている、という感覚が、じんわりと皮膚の下から滲み出してくる。

「怖くない?」と彼が聞いた。最初の頃の話だ。今はもう聞かない。私が怖くないことを知っているから。

私たちが出会ったのは、二年前のことだ。マッチングアプリで知り合って、最初の三ヶ月は普通に友人として食事をしていた。私がオープンリレーションシップであることを伝えたのは、四回目に会ったときのことで、彼はしばらく黙って、それからこう言った。

「それって、ご主人が許してるってこと?」

「許すとか許さないじゃなくて、二人で決めたことなの」と私は答えた。

彼はしばらく考えて、「わかった」とだけ言った。余計なことを聞かなかった。それがすごく良かった。

シーツの上で、私は彼の胸板に頬を寄せる。彼の心臓の音が、耳の奥に直接響く。こういう瞬間が、一番好きだ。激しさのあとの、静かさ。

幸せだと思う。本当に。これが幸せじゃないとしたら、何が幸せなんだろうと思うくらいに。
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夫がいて、彼がいる
——二つの愛の在り処

霧島 夜子
第二章 夫のことを考えていた
第三章 愛し方の違い
第四章 夜の終わりに
第五章 朝、夫の隣で
第六章 二つの愛の在り処
後記
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